君の鼻毛を抜きたい
一年間、通いなれた病室。
ベッドで物言わずに眠り続ける妻の体を拭き、薄化粧を施し、髪型を整える。今日も変わらずに美しい。
一年前、病に倒れ、昏睡状態になった妻の身なりを、毎日こうして整えてきた。
妻は美しい人である。元々、美しい顔をしていたが、美しくあろうとする人であった。
どんなに忙しかろうと、派手すぎない、自分の魅力を引き立たせる化粧をし、服を選び、周囲の人に心地よい華やかさを与える人。
それは、結婚して、一緒に暮らすようになってからも変わることはなかった。
一年前。突然の病に倒れ、意識を失い、ただ眠るだけの状態になってからは、彼女の美しさを損なってはならないと思い、私がこうして彼女の身なりを整えてきた。
それは、幸せな時間でもあったが、いつまでこの生活が続くのかを考えると、絶望の淵に沈む、恐怖の時間でもあった。
しかし、希望が見えた。
海外にいわゆるゴッドハンドと言われる医者がおり、彼ならば、手術で彼女を救うことができるかもしれないと言うのだ。
その医者は多忙で、手術の順番をかなり待つことになったが、妻の手術をしてくれることになり、明日彼女は海外に旅立つ。
海外には、彼女の両親が同行することになり、私は日本に残る。次に会うのは、意識を取り戻し、自分の足で立つ妻だ。
しかし、海外では、彼女の身なりまでを気に掛けることはきっと難しいだろう。
常に美しくあろうとしていた妻だ、目を覚ました時、乱れた姿を人に晒すことを、きっと悲しむだろう。
だから私は、お守り代わりに一つの箱を荷物に入れ、彼女が目を覚ました時、一番最初に手にしてもらえるよう彼女の両親にお願いした。
ちょっとした仕掛けを施したこの箱を
数年前、彼女と初めて会った飲み会の席を思い出す。
いわゆる合コンというやつだ。その時、デート中、恋人の鼻毛が出ていたらどうするか、という話題になり、彼女は
「好きな人だったら、きちんと指摘して欲しい。」
と答えた。
だから、きっと彼女はこの箱を喜んでくれるだろう。
そして、日本で再会したとき、彼女は笑いながらちょっと怒って、私にこの箱を投げ返してくるのだ。
愛する妻よ。どうか、どうか無事で帰って来ますように。
(この物語はフィクションです。)
はい。こんな下らないことを考えていました。
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ワークショップ番外編レポート「ハコ作りナイト」 | 株式会社そら│オーダーメイドによるパッケージ・貼り箱製作
子供の頃の図工の授業や雑誌の付録、プラモデルなんかを夢中で作っていたことを思いだし、とても楽しかったです。
こんな箱を作れるようになったら、きっと贈り物をするのがますます楽しみになるでしょうね。